
資料1−1関連文書
日本学術会議『科学研究者の地位に関する勧告』の
我が国における実現についての要望
総学庶第579号
昭和50年5月10日
内閣総理大臣、外務大臣、大蔵大臣
文部大臣、自治大臣、総理府総務長官 殿(各通)
科学技術庁長官、人事院総裁
日本学術会議会長 越智 勇一
「科学研究者の地位に関する勧告」の我が国における実現についての(要望)
標記について、本会議第68総会の議に基づき、下記のとおり要望します。
記
先に、本会議第65回総会における声明「科学研究者の地位に関するユネスコの国際勧告について」(別紙資料)でその速やかな成立を要望していた標記勧告が、ユネスコ第18回総会において、日本政府の賛成を含めて圧倒的多数をもって採択され成立したことはよろこびにたえないところである。
よって本会議は、本勧告の重要性にかんがみ、政府がその周知徹底を図るとともに、その趣旨が国内において速やかに実現されるよう、努力されることを要望する。
なお、本会議としても、本勧告に関する特別委員会を設置し、シンポジウムの開催、必要な国内諸制度の研究にあたるなど本勧告の趣旨の実現のための諸措置について具体的検討を進める所存であるので、本会議と密接な連絡を取られるよう、併せて要望する。
(別添資料)
科学研究者の地位に関するユネスコの国際勧告について(声明)
昭和49年4月26日
日本学術会議第65回総会
国連教育科学文化機関(ユネスコ)が来る10月〜11月に開催される第18回総会に上程する予定で現在討議中の「科学研究者の地位に関する国際勧告」は科学者の義務と責任を明らかにし、その正当な地位を保障しようとする趣旨のものである。特に科学研究の公民的及び倫理的側面を強調したことは、内外の科学者にとって、極めて重要な意義をもつものである。
日本学術会議は、本国際勧告の内容がその趣旨に沿うものとなり、かつ、できるだけ速やかにユネスコ総会で採択されることを強く期待するものである。本会議は、極力我が国科学者の総意の上に立って、この期待を実現したいと考える。
ここに政府の積極的姿勢を強く期待するとともに全国、全専門分野の科学者、学・協会の協力を切に要望するものである。
なお、このために、本総会において承認された運営審議会付置ユネスコ小委員会の「科学研究者の地位に関する国際勧告案にたいする見解」を本声明に添付するほか、今後討議に必要な資料の配布、情報の伝達等については、本会議として、可能な限り努力を払いたいと考える。
別紙
科学研究者の地位に関する国際勧告草案(ユネスコ)(SC/MD/41AnnexV)に対する見解
1974年4月13日
日本学術会議運営審議会付置
ユネスコ小委員会
T 総体的な評価
本勧告草案の意義とその内容を、全体として、高く評価し、かつ、これを積極的に支持する。
1.本勧告草案の内容は、国連憲章、ユネスコ憲章、世界人権宣言の精神に合致し、かつ日本国憲法並びにこれらに基づくユネスコ活動に関する法律の趣旨に沿い、また、日本学術会議設立の趣旨にも正に合致するものである。
2.本勧告草案の内容は、日本学術会議が、従来、科学・技術、科学者の地位に関して表明してきた見解(勧告、申し入れ、声明等、特に「科学研究基本法」の制定に関する勧告、及び学問・思想の自由、科学者の待遇諸問題に関する勧告等)と即応する部分が多い。また、近年における我が国の科学・技術の現状、科学者の地位の状況にかんがみるならば、このような内容の国際勧告が採択されることは、我が国の科学者にとってはもちろんのこと、広く国民にとっても少なからざる意義をもつものと考えられる。これは、内外の研究者にとって、かつてのユネスコの「教師の地位に関する勧告」(1966年)にまさるとも劣らぬ重要な国際文書となること疑いないであろう。
3.本勧告草案の起草にあたっては「予備勧告」(SC/MD/35)に対して各国から寄せられた意見等を可能なかぎり採り入れ、合意に達せられるような格段の努力が払われていることは明白であって(sc/MD/41Annex
U参照)、この点、ユネスコ事務局長以下関係者の努力にたいし、深じんな敬意を表するものである。
なお、本会議が「予備勧告」にたいして述べた見解中、その若干の弱点として指摘した条項の大半は、今回の勧告草案で改善されており、この点も本会議としてはきん快の至りである。
U 本勧告草案に補足を要望する若干の事項
以上のごとく、本勧告草案を全体として高く評価し、積極的に支持する立場に立って、可能ならば、下記の諸事項について考慮されることを要望したい。
1.人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上又はその他の意見等による差別があってはならないことについては、para.11-(a)で言及されているが、このことの重要性にかんがみ、また、これは国連憲章、世界人権宣言等、本勧告草案もそれらに依拠している重要国際文書(前文第2節及び付属書参照)が掲げている基本的原則であることにかんがみ前文中に明記されることが望ましい。
2.前文第3節3−(a),(b)に関連して、科学の歴史的発展の現段階に関する大局的位置づけを、例えば前文中で行うことが適切であろう。
特に、このことは、本勧告草案のもつ今日的意義を明白にするためにも、また、とりわけ先進国と発展途上国における研究開発及び科学者の地位に関する本文中の関係条項の意義を明らかにするためにも必要であると考えられる。
3.本勧告草案の根底をなす基本的原則にかんがみるならば、他方、それは本会議が従来とってきた立場にも合致するものであるが、科学の研究・開発の成果の無視又は悪用、濫用、及び科学者の資質の悪用、濫用を防止することは科学者の社会的責任でもあり、同時奪うべからざる権利でもあることが、例えば前文中に明記されることが望まれる。
4.本勧告草案において「科学研究の市民的、倫理的次元」(Section
V)が重視されているのみでなく、本勧告草案の全体を貫く指導的精神にかんがみるならば、SectionT、para.1-(a)-(ii)における社会科学への言及に更に加えて、人文科学(哲学、文学、美学等)の重要性が指摘されることが望ましい。
5.本勧告草案では、科学研究者の創造的資質の育成、尊重とその成果の評価、公開が強調されており、このことは高く評価すべきだ。
だが、科学者の創造性が発揮されるために、極めて重要、かつ、不可欠な役割を期待されている研究補助者の地位の尊重についても明示することが望ましい。6.para.15-(e),para.24,33などと関連して、本人の意思を尊重すること、並びに配置転換、業績評価等に際しては、本人に対し、民主的に選ばれた第三者判定機関への申立(appeal)の権利を保障することが望ましい。
【出典:日本学術会議『勧告・声明集』第八集】
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