私たちは軍事研究に手を貸しません

筑波農林研究団地平和宣言資料集

         
         はじめに
 
         生物研平和宣言
         畜試平和宣言
         蚕糸試験場(筑波)平和宣言
         林業試験場(筑波)平和宣言
         農土試平和宣言
         果樹試験場平和宣言
         農業環境技術研究所平和宣言
         家畜衛生試験場平和宣言
         食品総合研究所平和宣言
 
 

全農林労働組合筑波地方本部


はじめに
 
 筑波農林団地は、「科学万博」で有名になった、筑波研究学園都市の南部にあります。ここには、農林水産省に属する農業研究センター、農業生物資源研究所、農業環境技術研究所、畜産試験場、家畜衛生試験場、蚕糸試験場、果樹試験場、農業土木試験場、食品総合研究所、林業試験場、熱帯農業研究センターの11の研究機関があり、みな、それぞれの歴史と独自の研究分野をもって、科学技術、農林業発展のための研究を行っています。
 最近の軍事優先・好核の政治は、農林水産省の研究機関に働く私達にも、軍事研究への協力に動員される危険性をひしひしと感じさせています。また、ここ数年来、農林研究団地内の複数の研究機関に、見学と称して自衛官が来るようになりました。さらに、「国家機密法」制定への動き、防衛庁の参加を公然とうたった「研究交流促進法」の成立、SDI(米レーガン政権の「戦略防衛構想」。いわゆる「スターウォーズ」計画)開発研究への日本政府の参加決定などの一連のできごとに、私たちは大きな不安を感じています。
 このような中で、通産省の電子技術総合研究所(電総研)の職員が発表した「電総研平和宣言」は、私達にも強い衝撃と励ましを与えました。そして、同じ筑波に働く仲間として、何かしなければならないのではないか、何が出来るか、という考えが、次第に広がってきました。
 1987年の原水爆禁止世界大会を前にして、私達も、それぞれの研究分野と平和とのかかわりをきびしく問い直し、平和のための研究の推進と、軍事研究の拒否を内外に宣言する運動を起こそうという機運が急速に盛り上がりました。そして、それぞれの研究機関で発起人会を作って宣言文と趣意書を起草し、わずか1カ月の間に、9の研究機関で、いずれも全職員(支場所の職員も含む)の8割をこえる賛同を得て、平和宣言を採択することができました。残り2機関でも、平和宣言を行うべく、現在取り組みを進めています。
 ここに収録したのは、各場所の宣言文と、その採択にあたって全職員によびかけた趣意書の全文です。
 それぞれの研究機関の職員が、みずからの仕事と平和問題とのかかわりを真剣に考え、真摯な討論を経て、「平和宣言」に至った過程を読みとって頂けると思います。
この資料集が、全国の平和を愛する人々との連帯を深めることに役立ち、軍事研究に反対する研究者の運動に役立つことを望みます。
生物研平和宣言
 
 農業生物資源研究所に働く私たちは、人類の永遠の平和の支えとなる人道に沿った科学の発展を願って、次の宣言を行う。
 
一、私たちは、人類の幸福に寄与すべく研究を行う。
一、私たちは、研究において公開の原則を貫く。
一、私たちは、軍事を目的とした研究を行わないことを誓う
 
「生物研平和宣言」 の趣旨説明
 
「 生物研平和宣言」は、科学技術が過去の戦争において人類殺戮の手段に用いられたことへの深い反省と日本国憲法の基本精神に立つものです。私たち生物研職員は、これまで人類の福祉・平和のための研究に従事し、軍事利用を目的とする研究には一切参加しませんでした。しかし、昨今の状況の変化を見ると、将来ともに平和利用を目的とした研究を行えるか不安です。私たちは、今後とも生物研で働く職員が 軍事関係の研究には決して参加しないことを決意し、「生物研平和宣言」として内外に向け表明します。
 
 わが国は、第二次世界大戦で失われた数百万人の尊い犠牲から平和の大切さを学び、戦争放棄を日本国憲法で誓いました。最近、わが国政府は、米国から要請があった戦略防衛構想(SDI)への参加を決定しました。このSDI研究計画への参加は、核を含めた軍拡競争を一層助長することになります。今でも、地球上には広島、長崎に落とされた原子爆弾の数千発分の「核」が存在し、人類滅亡の危機にさらされています。このような絶望的な恐怖から逃れるためには、核兵器廃絶と軍縮以外にはありません。
 
 私たちの職場である農業生物資源研究所は、世界的な自然環境の変化、農業技術の改革の中で、失われるつつある生物資源を収集・保存・あるいは新たに創成し、それらの豊富な素材を利用した細胞操作、遺伝子操作、変異作出等バイオテクノロジーによる有用農業生物の飛躍的な改良とともに、生物の潜在的諸機能を解析し、その機能を最大に発揮させる新技術の開発を目指しております。これらは、まさにわが国のみならず世界的な規模において人類の生活を豊かにするために理想に満ちた平和の精神に基づく研究に他なりません。しかし、革命的なエネルギー源と期待された原子力が心ない権力者と科学者の手によって原子爆弾を生んだように、バイオテクノロジー等私たちの研究も一歩誤れば、従来の常識では考えられなかったような恐怖と混乱をもたらすことでしょう。私たちは、人類の平和のために用いるべき革新技術を、決して人類の滅亡へ導く手段として使わせてはなりません。
 ここ数年、自衛隊がたびたび生物研を視察にきています。昨年秋施行された「研究交流促進法」は、国立試験研究機関と民間との研究の交流を促進するための法律ですが、研究公務員に防衛庁職員を含めたため、私たちも民間等との共同研究を通じ、間接的に軍事研究に参加する可能性が生じました。また、政府による「国家機密法(スパイ防止法)」の制定が画策されています。このような状況のもとでは、私たち研究所に働く者一人一人が軍事研究を行わないという明確な意識をぜひとも持つことが必要です。さもなくば、知らぬ間に加担していたということにもなりかねません。さらに、研究内容の公表が禁止されることなど研究の自由な発展が阻害されることも考えられ、人類の福祉と平和に貢献したいという私たちの願いは踏みにじられてしまいます。
  
  以上が、この「生物研平和宣言」を作成するに至った理由です。本日、発起人が署名の訴えに参ります。多くの賛同者を得て、この平和宣言を公表したいと思います。よろしくお願いします。
  
              1987年6月30日
                 生物研平和宣言 をすすめる実行委員会
 

畜試平和宣言
 
  畜産試験場に働く私たちは、人類の永遠の平和の支えとなる人道に沿った科学の発展を願って、次の宣言を行う。
 
一、私たちは、人類の幸福に寄与すべく研究を行う。
一、私たちは、研究において公開の原則を貫く。
一、私たちは、軍事を目的とした研究を行わないことを誓う
 
「畜試平和宣言」 の趣旨説明
 
「 畜試平和宣言」は、科学技術が過去の戦争において人類殺戮の手段に用いられたことへの深い反省と日本国憲法の基本精神に立つものです。私たちは、これまで人類の福祉・平和のための研究に従事し、軍事利用を目的とする研究には関与せずに研究に従事してきました。しかし、昨今の状況を見ると、私たちが将来にわたって平和利用を目的とした研究のみを行い得るか、不安な状況にあります。私たちは、畜産試験場が将来も 軍事利用を目的とした研究にかかわりを持つことがないよう願い、「畜試平和宣言」として内外に向けて表明します。
 わが国は、第二次世界大戦で失われた数百万人の尊い犠牲から平和の大切さを学び、戦争放棄を日本国憲法で誓いました。最近、わが国政府は、米国から要請があった戦略防衛構想(SDI)への参加を決定しました。このSDI研究計画への参加は、核を含めた軍拡競争を一層助長することになります。今では、地球上には広島、長崎に落とされた原子爆弾の数万発分の「核」が存在し、人類滅亡の危機にさらされています。このような絶望的な恐怖からのがれるためには、核兵器廃絶と軍縮以外にはありません。
  
 ここ数年、自衛隊が筑波農林団地にも視察にきています。昨年秋施行された「研究交流促進法」は、国立試験研究機関と民間との研究の交流を促進するとしつつも、研究公務員に防衛庁職員を含め、私たちも民間等との共同研究を通じ、SDIや軍事にかかわる研究に参加させられる可能性がでてきました。軍事にかかわる研究は、研究の姿を歪めるだけでなく、民生分野の研究水準を低下させ、研究の総合的発展の阻害を引き起こすことは、目に見えています。また、政府による「国家機密法(スパイ防止法)」の制定が画策されています。この法律が施行されれば、存在さえ秘密にされた軍事研究が進められる恐れがあります。そして、そのことを口外した研究者には重罰が課せられることになります。このような法律は、自由な発想に基ずく研究活動にとって有害であるばかりでなく、民主主義を根底から覆すものとなることは、戦前の歴史をみれば明らかです。さらに、研究内容の公表が禁止されることなど、研究の自由な発展が阻害されることも考えられ、人類の福祉と平和に貢献したいという私たちの願いは踏みにじられてしまいます。
 
  以上が、この「畜試平和宣言」を作成するに至った理由です。本日、発起人が署
名の訴えに参ります。多くの賛同者を得て、この平和宣言を公表したいと思います。
よろしくお願い致します。
               1987年7月 8日
                 「畜試平和宣言」 呼びかけ人一同

蚕糸試験場(筑波)平和宣言
 
   蚕糸試験場に働く私たちは、世界の平和と人類の幸福のため科学技術の発展を願って、次の宣言を行う。
 
1.私たちは、戦争のない地球と核兵器廃絶を願い、人類の福祉と生活向上に寄与すべく研究を行う。
2.私たちは、研究において自主、民主、公開の原則を貫く。
3.私たちは、軍事を目的とした研究を行わないことを誓う。
 
「蚕糸試験場(筑波)平和宣言」趣旨
 
 わが国は、第2次世界大戦における数百万人の尊い犠牲から恒久の平和と戦争放棄を日本国憲法で誓いました。しかし、現在、地球上には広島、長崎に投下された原爆の5万発分以上の「核兵器が蓄積され、人類は滅亡の危機にさらされています。最近、米国から要請で政府は戦略防衛構想(SDI)への参加を決定し、核を含めた軍備拡張競争に加担することになりました。
 平和産業であるはずの蚕糸・絹業も戦前、落下傘や砲弾の火薬包装、軍隊の飛行服や飛行機用タイヤ、翼地等の研究も行うという形で、戦争に協力させられた事実があります。
 私たち蚕糸試験場の職員は、第2次世界大戦後、人類の福祉と平和を願い軍事利用を目的とする研究には一切参加してきませんでした。
 しかしながら、日本農業をとりまく情勢ならびに科学技術政策の変化にともない、蚕糸・絹業を背景とする蚕糸試験場も、多様な国民的のニーズに応えるために、革新的農業技術の開発を目指したバイオテクノロジー等の先端技術研究を関係機関との協力のもとに進める方向にあります。
昨年秋に施行された「研究交流促進法」は、防衛庁職員をも対象としており私たち農林水産省の研究機関に働く研究者も共同研究を通じ、間接的に軍事研究に参加する可能性が生まれています。すでに、一部の研究機関には自衛隊員が出入りしはじめており、軍事研究に巻き込まれる危険が生じています。また、政府は「国家機密法(スパイ防止法)」を制定しようと画策しており、研究内容の公表が禁止されること等により、研究の自由な発展が阻害されようとしています。
 このような状況のもとで、いまこそ私たち試験研究機関に働く一人一人が人類の平和と福祉に貢献し、軍事研究を行わないという明確な意識を持つことが必要です。
ここに、私たちは科学技術が過去の戦争において人類殺りくの手段に用いられたことの深い反省と、恒久平和を願う日本国憲法の基本精神に立脚し、軍事関係の研究には決して参加しないことを決意し、 「蚕糸試験場平和宣言」を内外に向け表明します。
                1987年7月10日
                 蚕糸試験場平和宣言をすすめる実行委員会

 

林業試験場(筑波)平和宣言
 
 林業試験場に働く私達は、世界の平和と人類の幸福のため科学技術の発展を願って、次の宣言を行う。
1.私達は、戦争のない地球と核兵器廃絶を願い、人類の福祉と生活向上に寄与すべく研究を行う。
2.私達は、研究において自主、民主、公開の原則を貫く。
3.私達は、軍事を目的とした研究を行わないことを誓う。
 
「林業試験場(筑波)平和宣言」趣旨
 
 わが国は、第2次世界大戦における数百万人の貴い命の犠牲を教訓として、恒久の平和と非武装、戦争放棄を国の最高法規である日本国憲法に掲げています。しかし、現在の地球上には広島、長崎に投下された原爆の5万発分以上に相当する核兵器が蓄積されており、いつ核戦争が勃発し、人類が滅亡の危機にさらされるか不安を感じないわけにはいきません。
 平和産業である林業・林産業も、戦時中は兵舎・格納庫の建築資材、木製飛行機、木炭車に代表されるエネルギー資源など軍需物資に組み込まれ、我々の研究もそれらに力点を移されたことがありました。第2次大戦後は、人類の幸福と平和を目的として森林・林業・林産業に関する多面的な研究を行い、広く国民のためになる研究を発展させる努力を続けてきました。しかし、戦後においても細菌兵器の開発に関してリケッチアの研究が林業試験場に持ち込まれた例がありました。将来、枯葉剤などの化学兵器や病原菌などの生物兵器に関連して、林業試験場に軍事研究が持ち込まれる危険性を否定することはできません。
 昨年秋に施行された「研究交流促進法」は、防衛庁職員をも対象としており、私達林業試験場の職員も共同研究を通じ軍事研究への参加を強要される恐れがあります。政府はSDI研究の日米協約締結によって、研究内容の機密保持を定め、さらには「国家機密法(スパイ防止法)」を制定しようと画策しています。林業試験場においても研究内容の公表の禁止によって研究の自由が阻害され、関連研究が停滞する可能性があります。
昨年秋に施行された「研究交流促進法」は、防衛庁職員をも対象としており私たち農林水産省の研究機関に働く研究者も共同研究を通じ、間接的に軍事研究に参加する可能性が生まれています。すでに、一部の研究機関には自衛隊員が出入りしはじめており、軍事研究に巻き込まれる危険が生じています。また、政府は「国家機密法(スパイ防止法)」を制定しようと画策しており、研究内容の公表が禁止されること等により、研究の自由な発展が阻害されようとしています。
 この様な状況にある今こそ、私達林業試験場に働く一人一人が人類の平和に貢献し、軍事研究を行わないという明確な意識を持つことが必要です。
 私達は過去の戦争において人類殺戮の手段として科学技術が用いられたことへの深い反省と、恒久平和を願う日本国憲法の基本精神に立脚し、軍事関係の研究には決して参加しないことを決意し、「林業試験場(筑波)平和宣言」を内外に向けてここに表明します。
              1987年7月29日
 

農土試平和宣言
 
 農業土木試験場に働く私たちは、人類の永遠の支えとなる人道に沿った科学技術の発展を願って、次の宣言を行なう。
一、私たちは、人類の幸福に寄与すべく研究を行なう。
一、私たちは、研究において公開の原則を貫く。
一、私たちは、軍事を目的とした研究を行わないことを誓う
 
「農土試平和宣言」 の趣旨説明
 
 「農土試平和宣言」は科学技術が過去の戦争において人類殺戮の手段に用いられたことへの深い反省と日本国憲法の基本精神に立つものです。私たち農土試職員は、これまで人類の福祉・平和のための研究に従事し、軍事利用を目的とする研究には一切参加しませんでした。しかし、以下に述べるような昨今の状況の変化を見ると、将来とも平和利用を目的とした研究を行えるかどうか、不安を禁じ得ません。私たちは、今後とも農土試で働く職員が 軍事関係の研究には決して参加しないことを決意し「農土試平和宣言」として内外に向け表明します。
 
 わが国は、第二次世界大戦で失われた数百万人の尊い犠牲から平和の大切さを学び、戦争放棄を日本国憲法で誓いました。最近、わが国政府は、米国から要請があった戦略防衛構想(SDI)への参加を決定しました。このSDI研究計画への参加は、米ソの核を含めた軍拡競争を一層助長することを意味します。今でも、地球上には広島、長崎に落とされた原子爆弾の数千発分の「核」が存在し、人類は滅亡の危機にさらされています。このような絶望的な恐怖から逃れる道は、核兵器廃絶と軍縮以外にはありません。
 私たちの農業土木試験場は、農業分野における基盤整備に関連した土木工学的研究を行い農業生産の発展あるいは国土の保全に寄与しおります。しかし、土木工学は軍事研究に直結しやすい性格を持っています。第二次世界大戦では、周知のように、戦車を通すための地耐力の研究あるいは戦地における道路・橋の建設等を通して、土木工学は戦争に利用されてきました。諸外国では、工兵隊が土木工学の手法と成果を戦場に応用する役割を果たしており。我が国でも有事になれば即土木工学の軍事利用が
行われると思います。例えば、防災の立場から行われるダム破壊過程の研究成果は、敵に最大の打撃を与えるダム破壊技術の研究に容易に転用されるでしょう。私たちは、直接軍事研究に参加することは勿論のこと、自分の研究成果が軍事に利用されることも望みません。
 最近、自衛隊が農林団地をしばしば視察にくるようになったことは、農業における基礎的研究を軍需研究と結びつけようとしていることの表れと考えられます。わたしたちは、私たちの研究が直接、間接に軍事に係わりをもつようになっていく恐れをひしひしと感じないではいられません。また、昨年 秋に施行された「研究交流促進法」は、国際研究集会参加の点で若干改善されましたが、研究公務員に防衛庁職員を含めたという大きな問題問題があります。国立研究機関の研究者が出向先で軍事関係の研究に参加する可能性が生じたからです。 軍事に係わる研究は内容の非公開など研究の本来の姿をゆがめ、総合的な発展を阻害することは、これまでの歴史が教えています。
 一方最近、「国家機密法(スパイ防止法)」の制定をする動きが急速に強まっています。この法律が施行されれば、秘密に軍事研究が押し進められる危険性が十分にあり、それを口外しようとする研究者に重罰が課せられることになります。国家機密法は自由な発想に基づく研究の進展を阻み、民主主義を根底から覆すものにほかなりません。
 
  以上が、この「農土試平和宣言」を作成するに至った理由です。
 
    1987年7月28日    農土試平和宣言をすすめる実行委員会

果樹試験場平和宣言
 
 果樹試験場に働く私たちは、世界の平和と人類の幸福のための科学技術の発展を願って、次の宣言を行う。
 
一.私達は、戦争のない地球と核兵器廃絶を願い、人類の福祉と生活向上に寄与すべく研究を行う。
一.私達は、研究において秘密主義を廃し、自主、民主、公開の原則を貫く。
一.私達は、軍事を目的とした研究は行わないことを誓う。
 
果樹試験場平和宣言の趣旨
 
 私たちはこれまで軍事利用を目的とした研究には関与することなく人類の福祉と平和に寄与すべく研究活動を行ってきました。しかし、昨今の状況は私たちが平和利用に徹して研究を行うことができるかどうか不安な情勢になってきています。
その原因の第一は、米ソ両国を頂点に膨大な核兵器が存在するにもかかわらず、軍事バランスを口実に、東西の軍拡競争が激化し、日本もアメリカの同盟国としてそれに加担していることです。とくに、日本政府が、アメリカのレーガン大統領が提唱したSDI(Strategic Defence Initiatives, いわゆるスターウオーズ計画)研究計画への参加を閣議決定したことで、現実に、現実に、日本の科学技術が否応なく軍事研究に動員されようとしています。
 第二に、多くの研究者が反対したにもかかわらず、昨年5月に成立した研究交流促進法には、研究機関の範囲に防衛庁の研究所も含まれました。そのため、自衛隊や兵器を製造している民間大企業が研究交流の名のもとに、自由に大学や国立研究機関の施設を使って共同研究ができるようになり、一方、大学や国立研究機関の研究者が自衛隊や民間企業に派遣され、軍事目的の共同研究に従事させられる危険性もでてきました。促進法にもとづき、今夏発足する研究交流促進連絡協議会には、各省庁研究機関と国立大学のほか、防衛庁研究機関のすべてが入る予定といわれています。
第三に、軍事研究とは不可分な機密保持と関連して、「国家機密法(スパイ防止法)」制定の画策が続けられていることです。 研究内容の公表は、科学の健全な発展を阻害する以外の何物でもありません。
 数年前には予想できなかったような、軍事研究推進の体制づくりに対して、今、各地で軍事研究反対の声がが広がりつつあります。しかし、一方では名古屋大学や電総研が行った、軍事研究はしないという平和宣言に対して、しつような攻撃が続けられています。
 比較的軍事研究とは縁がないと思われていた農水省の試験研究機関にも、ここ数年来頻繁に自衛隊が見学に訪れ、食料研究でさえ軍事目的への転用がありうることを如実に物語っています。
 私たちの意図とは無関係に、軍事研究に巻き込まれる危険性が強くなっている今日の情勢のもとで、国立試験研究機関に働く私たちすべてが“軍事研究NO”の姿勢を示すことは、この果樹試験場においても重要で、意義のあることであるとおもいます。
 多くの賛同者を得て、果樹試験場平和宣言を公表したいと思いますので、よろしくお願いします。
              1987年7月20日
                 果樹試験場平和宣言をすすめる実行委員会

農業環境技術研究所平和宣言
 
 農業環境技術研究所で働く私たちは、世界の平和と人類の繁栄のための科学技術の発展を願って、次の宣言を行う。
 
1.私たちは、戦争のない地球と核兵器廃絶を願い、人類の福祉と生活向上に寄与すべく研究を行う。
2.私たちは、研究において自主、民主、公開の原則を貫く。
3.私たちは、軍事を目的とした研究を行わないことを誓う。
 
「農業環境技術研究所平和宣言」趣旨
 
 わが国は、第2次世界大戦における数百万人の尊い犠牲から恒久の平和と戦争放棄を日本国憲法で誓いました。しかし、最近、米国からの要請で政府は戦略防衛構想(SDI)への参加を決定し、核を含めた軍備拡張競争に加担することになりました。現在、地球上には広島、長崎に投下された原爆の5万発分以上の核兵器が蓄積されています。人類はいま滅亡の危機にさらされているといえるでしょう。
 農業環境技術研究所は、高密度社会科の発展に伴って 農業環境が劣悪化するなかで、これを総合的に管理、保全するための技術を開発することを目指しています。これは世界人類の繁栄のための農業基礎研究であるはずです。私たち農環研職員はこれまで軍事利用を目的とした研究には一切参加してきませんでした。しかし、環境の管理技術は、道を誤れば環境操作のための技術として予期せぬ方向へ悪用されないとも限りません。ベトナムにおける枯葉剤作戦は農業生産に使うべき除草剤をエコサイド(生態系破壊)に使用した忌まわしい事件ですし、わが国でも第二次大戦中731部隊により細菌兵器やペストの媒介者ヒトノミを散布させるための爆弾の開発などが行われ、気象データの軍事利用とそのための軍事機密化なども起こっています。
そして現在スパイ衛星が宇宙をかけめぐり、リモートセンシング手法の利用により相手国の軍事施設などの査察を行っています。人類繁栄のための技術は人類滅亡のための技術であってはなりません。私たちは研究に直接・間接にたずさわるものとして、
私たちの研究がそのような方向へ使われないように責任と自覚を持って監視する必要があります。
 昨年秋に施行された「研究交流促進法」は、国立試験研究機関と民間との研究交流を促進するための法律ですが、これは防衛庁職員をの対象としています。このため農林水産省の研究機関に働く研究者も、共同研究を通じ、間接的に軍事研究に参加する可能性が生まれています。すでに、農林団地内にも自衛隊員が出入りしはじめており、軍事研究に巻き込まれる危険性が高まっています。また、政府は「国家機密法(スパイ防止法)」を制定しようと画策しています。これによって研究内容の公表が禁止されるなど、研究の自由な発展までもが阻害されようとしています。
 このような状況のもとで、いまこそ私たち試験研究機関に働く一人一人が人類の平和と繁栄に貢献し、軍事研究を行わないという明確な意識を持つことが必要です。
 ここに、私たちは科学技術が過去の戦争において人類殺りくの手段に用いられたことに対する深い反省と、恒久平和を願う日本国憲法の基本精神に立脚し、軍事関係の研究には決して参加しないことを固く決意し、「農業環境技術研究所平和宣言」を内外に向け表明します。
 
           1987年7月20日
            農業環境技術研究所平和宣言をすすめる実行委員会
 

家畜衛生試験場平和宣言
 
 家畜衛生試験場に働く私たちは、その意志に基づき世界の平和と人類の福祉に寄与するために、次の宣言を行う。
 
一.人類の滅亡につながる核兵器の製造・貯蔵・実験・使用に反対し、核兵器の廃絶を求める。
一.自主的、民主的研究を発展させ、公開の原則に基づいた研究を行う。
一.軍事に利用活用することを目的とする研究・研究協力は行わず、研究を通じ恒久平和に寄与する。
 
家畜衛生試験場職員のみなさんへ
 
   「家畜衛生試験場平和宣言」
  私たちは、戦争の惨禍を想起し、科学技術が戦争に「総動員」され、人類殺戮の手段に用いられたことへの深い反省と日本国憲法の基本精神に立って、「家畜衛生試験場平和宣言」を行いたいと考えます。現在、私たち家畜衛生試験場職員は人類の福祉・平和のための研究に従事し、軍事利用を目的とする研究には一切参加していません。しかし、昨今の状況を見ると、将来とも平和利用を目的とした研究を行えるか不安です。私たちは「家畜衛生試験場平和宣言」採択後、今後とも家畜衛生試験場に働く職員が軍事関係の研究には決して参加しないと決意したことを内外に向け表明します。
 
 満州第100部隊では
 家畜衛生試験場は戦前・戦中軍馬の伝染病研究を通して軍事研究に関係してきました。また、獣医学は、第2次世界大戦では、満州で731部隊の研究実験を基礎にし創設された「軍馬防疫廠」(満州第100部隊)で生物兵器としての炭疽菌、鼻疽菌、牛疫ウイルス、その他の流行性獣疫菌の大量培養製造に悪用されました。
 
 人類の死滅・・・「核軍拡」
 わが国は、第2次世界大戦で失われた数百万人の尊い犠牲から平和の大切さを学び、戦争放棄を日本国憲法で誓いました。しかし、政府はこのような国民の決意を踏みにじり、軍事費の1%突破、米国の戦略防衛構想(SDI)への参加を決定しました。このSDI研究計画への参加は、核を含めた軍拡競争を一層助長することになります。今でも、地球上には広島に落された原子爆弾の100万発分の核兵器が核戦争のため製造、貯蔵されており、その1%が使用されただけで地球に「核の冬」がおとずれ人類の大半が死ぬと言われています。
 
 軍との研究・・・「研究交流促進法」
 昨年秋に産官学の研究交流を促進するための法律として「研究交流促進法」が施行されました。しかし、この法律では研究公務員の中に防衛庁職員を含めたため、私たちも民間等との共同研究を通じ間接的にあるいは直接的に軍事研究に参加する可能性が生じてきました。そして、国立の研究機関や大学と、大企業や外国との研究交流を進める政府組織として設置が決められた研究交流促進連絡協議会に、防衛庁が正式に参加することを決めたことからますますその可能性は高くなってきました。
 
「国家機密法」の画策
  また、政府による「国家機密法(スパイ防止法)」の制定が画策されており、何事に対しても物言わぬ(言えぬ)国民を作ろうとしています。この様な状況のもとでは、私たち国立試験研究機関に働く一人一人が軍事研究を行わないという明確な意識をぜひとも持つことが必要です。さもなくば知らぬ間に加担していたということにもなりかねません。さらに、研究の公表が禁止されるなど研究の自由な発展が阻害されることも考えられます。本来農業は食糧の安定供給という平和的な目的のみをもつ産業であり、その研究を通して人類の福祉と平和に貢献したいという私たちの願いは踏みにじられてしまいます。
 
 以上の背景を踏まえ、平和目的の研究のみ行うという趣旨に基づいて、「家畜衛生試験場平和宣言」を作成しました。職員のみなさん、発起人がまいりますので趣旨に賛同のうえ署名をお願いいたします。
                   1987年7月20日
                   「家畜衛生試験場平和宣言」発起人

食品総合研究所平和宣言
 
食品総合研究所で働く私達は、人類の幸福と世界の平和のための科学技術の発展を願って、次の三項目の宣言を行う。
 
一.私たちは、戦争のない地球と核兵器廃絶を願い、人類の福祉と生活向上に寄与すべく  研究活動を行う。
一.私たちは、研究における秘密主義を廃し、自主、民主、公開の原則を貫く。
一.私たちは、軍事を目的とした研究を行わないことを誓う。
 
食品総合研究所平和宣言の趣旨
 
 私達は、これまで軍事利用を目的とする研究には関与することなく人類の福祉と世界平和に寄与すべく研究活動を行ってきました。しかし、昨今の状況は、私たちが今まで通り平和利用のみを目的として研究を続けられるかどうか不安な情勢になってきています。
 現在、米ソ両超大国をはじめとする国々で膨大な核兵器が既に保有されているにもかかわらず、東西の軍拡競争は形を変えながら留まることをしりません。特に最近、アメリカ政府が提唱しているSDI研究に日本も参加する旨の閣議決定なされたことは、現実に日本の科学者が否応なく軍事研究に動員される可能性のあることを意味しています。
 また、多くの研究者が反対したにもかかわらず昨年成立した研究交流促進法では、研究機関の中に防衛庁の研究所も含まれているため、研究交流の名のもとに、自衛隊や軍事企業の研究者が大学や国立研究機関の施設を使って軍事研究を行うことができるようになり、大学や国立研究機関の研究者も軍事研究に従事させられる危険性もでてきています。
 さらに、軍事研究とは不可分な機密保持に関連して「国家機密法」制定の画策が続けられていることです。 研究内容の公表は、科学の健全な発展を保障するものでもあり、私達は断固これを守っていかなければなりません。
 このような軍事研究推進の体制作りの動きに対して、各地から軍事研究反対の声が広がりつつあります。比較的軍事研究との関係が薄いと見られがちな私達の研究ですが、食料の研究は非常に重要であり、軍事目的に転用される可能性は充分にあります。
 私達の意思とは無関係に、軍事研究に巻き込まれる危険性が益々強くなっている今日の情勢のもとで国立研究機関 に働く私たち全てが『人類の福祉と世界平和を目指し、軍事研究は行わない』という姿勢を示すことは非常に重要であり、意義のあることであると思います。
 多くの方々のご賛同を得て、食品総合研究所の平和宣言を公表したいと思いますので、宜しくご協力のほどお願い申し上げます。
                     1987年7月27日
              『食品総合研究所平和宣言』を進める実行委員会