
資料1−1
ユネスコ「科学研究者の地位に関する勧告」
採択1974年11月20日パリ
第18回ユネスコ総会
科学研究者の地位に関する勧告
第18回ユネスコ総会(パリ)は科学研究者の地位に関する第26議題を審議し、次の諸点にもとづいて1974年11月20日、勧告を採択した。
・ユネスコ憲章最終項において、国際平和と人類の共通の福祉という国連の目的の前進のために、科学分野における諸国民の協力関係の促進をうたっていること
・国連総会が1948年12月10日に採択した世界人権宣言第27条1項において、何人も自由に社会の文化生活に参加し、科学の進歩とその恩恵にあずかる権利をもつとうたっていること。
・次の二点を認識すること
(a)科学上の発見および技術の開発と応用は、人類の利益と平和の保持および国際緊張の緩和に向かっての進歩、とりわけ科学と科学的方法の最適な利用によって可能となるような進歩への広大な展望を開くものであるが、同時に、科学研究の成果が大量破壊を伴なう戦争の準備を目的として人類の死活的利益に反して使用されたり、一民族の他民族に対する搾取のために使用される場合には、脅威となる危機をも内包すること、またいずれにせよ複雑な倫理的法律的問題を提起するものであること
(b)この挑戦に対処するため、国は適切な科学技術政策の立案と実行のための機構を創設ないし強化すべきであり、その対策はおこりうる危険を回避し、科学的発見と技術の開発と応用の積極面を十分発揮させるようなものであるべきこと・さらに次の三点を認識すること
(a)有能で訓練された人々は、国内の研究開発能力の礎石であり、また他国でおこわれる研究の活用のためにも不可欠であること
(b)研究成果、仮説、見解の自由な交流は、学問の自由ということばの示すとおり科学の過程の本質であり、科学の成果の正確さと客観性を保証するものであること
(c)研究を進めるには十分な資金と設備が必要であること
・科学・技術政策についての政府立案がいっそう重要なものとなっていること。本勧告の付属書にかかげる政府間活動は、各種の世界的問題を広い国際的立場で解決し諸国家間の協力を強化し各国の発展をはかる上で科学技術の価値が増大しているという各国の認識を示している。こうした傾向が、適切な科学技術政策の導入と追求へ国を導くことを確信すること
・このような政府の活動は、人間と環境に対する高度の責任感をもって研究開発を行う力をはげまし、強める条件をつくるものであること
・このような条件のうち、最も重要なものの一つが、科学技術の開発にたずさわる人々に対し、その仕事の遂行に伴なう固有の責任と必要な権利を考慮に入れた正当な地位を保証することでなければならないこと
・科学研究活動は特殊な労働条件のもとで行われ、研究者に対し、その仕事と自国と国連の理想と目的に対する高度の責任ある態度を求めるものであり、従ってこの職業につく人には適正な地位が必要であること
・政府・科学界の意見や世論の動向からみて、科学研究者に対する公正な地位の保証を望む各国政府を援助するための諸原則を策定するのに、本総会が適当な機会であること
・労働者一般、特に科学研究者に関しては、本勧告の前文と付属書に掲げられている国際文書においてすでにこの点について多くの価値ある仕事がなされていること
・「頭脳流出(brain drain)」という現象がこれまで広く憂慮されてきたこと、また一部の国にとってはなおひきつづき重大な関心事となっていることを考え、この点に関する発展途上国の大きな要求を念頭におき、科学研究者に彼らを最も必要としている国々と地域において奉仕する強い動機(reason)を与えることが望ましいこと
・科学研究者の地位に関する類似した諸問題がすべての国で生じており、これらの諸問題を解決するためには共通のアプロ−チを採用すべきであり、可能なかぎり共通の基準と措置を適用することが求められており、これらの作成こそ本勧告の目的であること
・本勧告の採択と適用に際し、科学・技術の研究・開発のパタ−ンと組織を定める法令、慣習に国によって大きなちがいがあることを十分考慮すべきこと
・そのため科学研究者の主要な関心事に関する規定によって、法、慣習および本勧告前文と付属書に掲げた国際文書類に含まれる基準と勧告を補完することが望ましいこと
総会は加盟国が以下の規定を適用すべきこと、そのために本勧告の原則と規範を国内で適用するのに必要な立法措置その他の措置を講ずるように勧告する。
総会は加盟国が本勧告に関し研究・開発の実施と成果の応用に責任を有する政府部局、研究機関、企業および科学研究者の利益を代表する諸団体その他の注意を喚起するよう勧告する。
総会は加盟国が本勧告を実施するためにとった措置について総会の定める期限と様式により報告するよう勧告する。
T適用範囲
1.本勧告の適用上
(a)(1)「科学(science)」とは、観察された現象の客観的研究を通じて因果関係の連鎖を発見し、マスタ−するために、人類が個人あるいは集団として行動し、組織的な試みを行うこと、得られた知識のまとまりを系統的な思考(reflection)と概念化を通じて、多くは数学記号によって表現された整合的な形式にすること、それによって自然と社会の事象に関する理解を人類が自らのために用いる機会を与えることなどの営み(enterprise)をいう。
(2)「諸科学(the science)」とは、事象と仮説の複合体であって、その理論的要素は通常(normally)証明可能であるものをいい、その限りにおいて社会的な事象に関する諸科学を含む
(b)「技術(technology)」とは財貨やサ−ビスの生産または改善に直接関係する知識をいう。
(c)(1)「科学研究(scientific research)」とは、上に述べた科学的知識の生成に含まれる研究(study),実験、概念化および理論検証の諸過程を言う。
(2)「開発(experimental development)」とは、実用化のための適応化(adaptation)、試験および改良(refinement)の諸過程を言う。
(d)(1)「科学研究者(scientific researcher)」とは科学又は技術の特定分野の研究に責任を有する人々をいう。
(2)本勧告を基礎として、国は科学研究者のカテゴリ−の基準(資格証書、学位、学術上の称号または職務(function)を有していること)、およびそれに準ずるべき事項を定めることができる。
(e)科学研究者に関連して用いられる「地位(status)」とは、第一に、彼らの職務に固有な義務および責任ならびにそれらを遂行する能力の評価の度合いによって、第二に彼らが仕事を達成するために受ける諸権利、労働条件、物質的援助および精神的(moral)支援によって示されるような立場(standing)や彼らに対する敬意を言う。
2.本勧告は次の事項にかかわりなくすべて科学研究者に適用される
(a)雇用者の法的地位または科学研究者の勤務する組織および施設のタイプ
(b)科学研究者の科学上または技術上の専門分野
(c)従事する研究・開発(scientific research and experimental
development)の目的
(d)研究・開発が直接に関係している応用の種類
3.研究・開発をパートタイムで行っている科学研究者の場合には、本勧告は、研究・開発に従事する時間においてのみそのかぎりで適用する。
U 国の政策立案と科学研究者
4.国(member state)は、自国民の文化的物質的福祉の向上のために科学技術を用いるとともに、国連の理想と目的を実現するよう努めなければならない。そのため、国は研究・開発の振興をはかるような科学・技術政策の担当部門をおかなければならない。国の科学・技術政策、研究者の処遇は、科学・技術がより人間的で真に公正な社会を築くための総合的努力の一環であることを表すものでなければならない。政策の立案と実行のの立案と実行の立案と実行の
5.国は、政策立案にあたって次のようにしなければならない。
(a)研究・開発のための公的資金の支出を、収益の回収に長期に要する公共投資として取り扱うこと
(b)その必要性を世論の前に明らかにすること
6.国は、国際平和や窮乏の除去などの世界的問題および汚染の監視・規制、気象予測、地震予知など国際協力が必要な問題に科学・技術を応用する必要があるとの立場で、国際的な政策をつくり実行するよう努めなければならない。
7.国の科学・技術政策立案に研究者が参加する機会を増やさなければならない。とくにそのプロセスで研究者とその職能団体の助力を得られるような制度をつくらなければならない。
8.国は、公的な研究・開発において、研究者が公的責任を自覚すると共に、その仕事にふさわしい自治を保障されるような制度をつくらなければならない。研究者が創造的活動をすすめるには、研究の自治と自由を尊重する科学・技術政策が必要なことを十分に考慮しなければならない。
9.研究者の異動の自由を尊重しつつ、国は研究者を支援しはげますため、次のような状況をつくりださなければなければならない。
(a)青年が研究・開発の職業に魅力を感じ、将来性に確信をもてるようにすること
(b)科学・技術の世界で尊敬される研究者がたくさん育つように促すこと
(c)若い研究者の多くが自国で働きまた自国にもどる誘因をもつような状況を促進すること
V科学研究者の教育と養成(training)
10.国は、科学研究をすすめるには、高度の道徳的知的資質をもつ高潔で成熟した研究者が求められる、という事実を尊重しなければならない。
11.この高い資質を持つ研究者が育つよう、国は次のことを行わなければならない。
(a)人種、肌の色、性、言語、宗教、政治上などの見解、出身国、出身階層、貧富、家柄による差別なしに、すべての市民が研究者となるための教育・養成を受ける機会を平等にもてること、またそののち研究分野で平等な就職の機会を与えられること
(b)教育・養成の中で社会への奉仕の精神を育てること
12.教育者の必要で妥当な独立性をおかさないようしながら、国は次のような教育上の創意を促さなければならない。
(a)自然科学と技術に関するカリキュラムに、社会科学・環境科学をとりいれること
(b)次のような資質と習慣を育てること
(1)無私な態度と知的誠実性
(2)問題を、見通しと調和をもって人間的に考察する能力
(3)一見技術的にしか見られない問題の中の市民的倫理的意味をつかむ力
(4)研究・開発によって生ずる社会的生態学的結果に注意すること
(5)科学技術者以外の人々と交流し協力する上での積極性
W 科学研究者の使命(vocation)
13.国は研究者の使命感が自国民と人類一般への奉仕という観点のよって強められるものだということを銘記しなければならない。国は研究者に対し、社会奉仕の精神で行なう研究・開発をはげますのにふさわしく処遇しなければならない。
14.国は研究者の次に掲げる責任と権利を支持し、その条件を強めなければならない。
(a)科学的真理の追究のために知的自由の精神のもとで働く責任と権利
(b)研究計画の目的と方法の決定に加わり、それらを人間的社会的生態学的に責任あるものとする責任と権利
(c)研究計画の人間的社会的生態学的価値に関して自由に意見を表明し、良心の命ずる時は、最終的にはその計画から身を引く責任と権利
(d)自国の科学・文化・教育の形成、国民的目標の達成、国民の権利向上、国連の理想と目的の前進に積極的に貢献する責任と権利
国が研究者の雇用者となり、(a)〜(d)項の例外を必要とする時は、それをできるだけ明確かつ厳密に示さなければならない。
15.国は研究者を雇用するすべてのものが14の勧告に従うよう、適切な措置をとらなければならない。
・科学研究の国際的側面
16.国は、研究・開発の国際的なひろがりの状況を認識し、研究者がこのような状況を、国際平和・国際協力・国際理解と、人類の共通の福祉の前進のために利用するよう援助に努めなければならない。
17.国は、とくに人類全体の生存および権利に関する諸要因をより深く理解するための科学者の創意に対しあらゆる可能な支援を与えなければならない。
18.国は、世界の科学技術研究に貢献する上で自国の研究者、ことに若手研究者の知識・勤勉・理想主義の協力を求めなければならない。国は、自らの文化と主権の強化に貢献する社会的経済的発展に努めるさいに、研究者のあらゆる助言と援助を歓迎しなければならない。
19.科学技術の知識をもつ可能性をすべての人々の利益に適合させるために、国は研究者に対し、16,17,18の諸原則を銘記するよう促さなければならない。
X科学研究者の成功のための諸条件
20.国は、次のようにしなければならない。
(a)国は、研究・開発を成功に導くよう科学研究者に精神的支援と物質的
援助を行なうことは、科学研究者の利益のみならず公共の利益であることを銘記すること
(b)国はこの点に関し、研究者の雇用者として責任をもつと同時に、他の雇用者に対して模範を示すようにしなければならないことを認識すること
(c)国は、研究者を雇用するすべての者に対し、この章のすべての条項にてらして、研究者に満足な労働条件を与えることに細心の注意を払うように促すこと(d)国は、研究者が性、言語、年齢、宗教、出身国による差別なしに、その地位と業績にふさわしい労働条件、賃金条件を享受するよう保証すること
・適切な経歴開発(career development)の展望と便宜(facilities)
21.国は、次のように研究者の要求に適切にこたえる雇用政策を作成しなければならない。
(a)政府の雇用する研究者に適切な適切な経歴開発の展望と便宜を与えること、また民間の雇用者にも同様にするよう勧奨すること
(b)研究者が、その仕事の性格上、困難におちいることのないよう、研究開発の企画にあたってあらゆる努力をはらうこと
(c)常勤の研究者に関しては、再適応と配置換えの便宜のために必要な資金を研究開発計画の一部に組み入れること、とくに期間の限定された計画においては(その場合に限らないが)そうすべきである。このような便宜が不可能な場合は、適切な補償制度を用意すること
(d)若手研究者にその能力にふさわしい研究・開発にたずさわる機会を与えること
・恒久的な自己再教育
22.国は、次のことを奨励するよう努力しなければならない。
(a)研究者が自己の専門および関連分野の進歩におくれないようにする機会−−会議への出席、図書館又は他の情報源の自由な利用、教育または職業課程への参加−−を享受すること、また研究者が必要な場合には、科学の他の分野に転身するために更に科学的養成を受ける機会をもつこと
(b)この目的のために適当な便宜が与えられること
・職務移動について、特に行政職務に関して
23.国は、人材政策の一部として、国の研究・開発機関と、高等教育機関や生産企業との間で、研究者の交流又は移動を奨励し、かつ促進するための措置を講じなければならない。
24. 国は、あらゆるレベルの政府機関が、研究者の技能(skill)と洞察によって利益を受けられることに留意しなければならない。したがって研究者のための特別の給与表および雇用条件を導入した国々の経験を、それらの方式(scheme)がどの程度、自国の必要を満たすのに役立つかという観点から、注意深く比較検討することが利益となろう。これに関してとくに注意を払う必要があると思われることは次のとおりである。
(a)高級人材に関する包括的国家政策の枠組みの中で、研究者の最適な利用をはかること
(b)研究者の物質的条件が、同等の経験と資格をもつ他の労働者と均衡がとれ、かつその国の生活水準の維持に足るものとするために、研究の物質的条件を定期的に検討する手続きを備えることが望ましいこと
(c)公的研究機関において適正な経歴開発の展望を与えること、および科学・技術における有能な研究者が、研究開発の職から行政職への移行(transfer)する選択権(opution)が必要なこと
25.国は、科学技術が他の国家活動分野との密接な接触によって刺激を受けられる(逆も同じ)という事実を生かさなければならない。したがって国は、研究・開発の中で培われた一定の好みや才能を持っている研究者が、関連分野の活動に進むのを妨げないよう配慮しなければならない。むしろ、研究開発の初期の訓練とその後の経験から、研究・開発の管理運営またはより広い総合的科学技術政策分野で能力を示した研究者が、その方向で十分な才能を発揮するよう奨励することに国は気をくばらなければならない。
・国際的科学技術集会への参加
26.国は、科学技術の健全な発展にとって生命である全世界の研究者のアイデアと情報の交流(interplay)を積極的に推進しなければならない。そのために、研究者がいつでも国際的科学技術集会に参加し、外国に行けるよう必要なあらゆる措置をとらなければならない。
27.国は、研究開発を遂行し管理するすべての政府機関及び準政府機関が、その雇用する研究者が国際的科学技術集会に参加する財源として、予算の一部を経常的にあてるよう配慮しなければならない。
・研究者の昇進、昇給の機会
28.国は、その雇用する研究者をより責任と報酬の大きい地位につかせる決定を、本人の知識や技能を示す公的又は学術的証書に基づくのみならず、現在または最近の業績が実証する能力の公正かつ現実的な評価に基づく方式とするよう奨励しなければならない。
・健康の保護と社会保障
29.(a)国は、その雇用する研究者と研究活動によって影響されるすべての人々の健康と安全を−−厳しい、危険な環境からの労働者一般の保護に関する国内法と国際文書にしたがって−−合理的に可能なかぎり保障する責任があることを承認しなければならない。したがって国は科学的施設の管理者が適切な安全基準を施行し、従業員に必要な安全措置について訓練し、危険にさらされるすべての人々の健康を監視かつ保護し、とくに科学研究者自身によって国の注意が喚起された新しい(と思われる)危険の警告に正当に留意し、かつ適切に対処するように、また労働日と休日の期間を適切なものとし、年次有給休暇を与えるようにしなければならない。
(b)国は、研究者を雇用する他のすべての者が同様の措置をとるよう奨励するためにあらゆる適当な措置をとらなければならない。
30.国は、研究者が年齢、性、家族状況、健康状態、仕事の性質にふさわしい適当で公正な社会保障を(他のすべての労働者と同様に)受けられるような規定を設けるようにしなければならない。
・創造性の促進、評価、公表および承認
〈促進〉
31.国は、科学・技術の分野のすべての研究者の創造的な仕事を刺激するよう積極的に努めなければならない。
〈評価〉
32.国は、その雇用する研究者に関して次のことを行わなければならない。
(a)研究者の創造性を評価する手続きにおいて、定常的な形で現われにくい個人能力の測定には固有の困難があることを十分考慮すること
(b)その能力が有益に刺激されると思われる研究者に
(1)新しい科学技術分野に転ずること
(2)研究・開発の仕事から、そこで得られた経験と個人の資質がより発揮できる他の職業に進むこと
のいずれかができるようにすること
33.国は、他の雇用者に対して同様のことを奨励しなければならない
34.国は、創造性に評価に関して、研究者が次のことを行うことができるようにしなければならない。
(a)世界中の科学者からの質疑、批判、示唆ならびにそうしたコミニュケ−ションとその結果としての情報交換から得られる知的刺激を何らの妨害なく受けること
(b)科学的業績にもとづく国際的賞賛を平穏に受けること
〈刊行による公表〉
35.国は、研究者が相応の名声を得るのを助け、科学・技術、教育、文化の進歩を促進するために、研究成果の公刊を奨励し促進しなければならない。
36.このため国は研究者の科学技術上の著作が、適当な法的保護、とくに著作権法による保護を受けるようにしなければならない。、
37.国は、研究者団体と協議し、標準的方式として次のことを行うよう研究者の雇用者に奨励し、また雇用者としての国自体もそれにつとめなければならない。
(a)研究者が自分の成果を公刊する自由を有しかつ奨励されることを原則とみなすこと
(b)公共の利益と使用者および他の研究者の権利を侵さぬかぎり、研究者が彼らの発見を公刊する権利に対する制限を最小限とすること
(c)そうした制限が加えられる状況について雇用条件の中で文書でできるだけ明確に示すこと
(d)同様に、本節に掲げる制限が特定の場合に適用されるか否かを研究者が確認できる手続きおよび不服申し立ての手続きを明確にすること
〈承認〉
38.国は、研究者が示した創造的努力に対し、相当の精神的支援と物質的補償を受けることに高い重要性をおくことを示さなければならない。
39.したがって国は
(a)次のことを銘記しなければならない
(1)研究者が、その示した創造性に対して受ける名誉と評価の度合いは彼らの仕事への満足感に影響を与えるだろうということ
(2)仕事の満足感は一般に科学研究の遂行に影響するであろうし、とくにその遂行における創造的要素に影響するだろうということ
(b)研究者に対して彼らの示した創造的努力にふさわしい待遇を与え、また他の雇用者にそうするよう促さなければならない
40.同様に、国は次の標準的方式を採用し、また他の雇用者にそうするよう促さなければならない
(a)研究・開発の過程で生ずるすべての発見、発明および技術的ノウハウの改良について、研究者(および場合によってはその他の当事者)にいかなる権利が属するかを雇用条件の中で明文で規定すること
(b)雇用者はつねに研究者の雇用に先だち、これらの明文規定に研究者の注意を促すこと
・研究者の雇用条件を定めた文書の解釈および適用における合理的弾力性
41.国は、研究開発が単なるル−チンにならないよう努めなければならない。したがって国は研究者の雇用条件または労働条件に定めたすべての文書が、科学技術の要求に合致した合理的弾力性をもって構成され、解釈されるように注意しなければならない。しかしこの弾力性は研究者に、同等の資格と責任を持つ他の労働者の享受する条件より劣る条件をおしつけるのに援用されてはならない。
・結社による研究者の諸権利の前進
42.国は、労働者一般の権利およびこの勧告の付属書に掲げられた国際文書に定められている諸原則の示す権利にしたがい、研究者が個人的集団的利益のために労働組合、職能団体および学会などの団体をつくることが完全に合法的であり、望ましいものであることを承認しなければならない。研究者の権利を保護することが必要なすべての場合に、これら諸団体は研究者の正当な要求を支援する権利を与えられなければならない。
Y 本勧告と利用と活用
43.国は、本勧告の範囲と目標に合致した活動を行うすべての国内、国際組織−−とくにユネスコ国内委員会、国際諸組織、科学技術教育者の諸組織、雇用者一般、学会、研究者の職能団体および労働組合、科学著作家団体、青年団体−−と協力することによって、研究者の地位に関する国の行動を拡大し補完するよう努力しなければならない。
44.国は、上記の諸団体の活動を最も適切な手段で支援しなければならない。
45.国は、研究者が社会奉仕(community service)の精神のもとに、本勧告に述べられた責任をひきうけ、権利を享受し、地位の承認をうるようにする上で、研究者を代表するすべての組織の注意深く(vigilant)かつ活発な協力を求めなければならない。
Z 最終条項
46.研究者が何らかの点でこの勧告の規定よりも有利な地位を享受している場合には、本勧告の条項はすでに獲得された地位を低下させるために援用されてはならない。
付属書
A 国際条約
国際労働機関総会によって採択され、労働者一般の若干の基本的人権に関係するもの
−結社の自由および団結権の保護に関する条約(1948)
−団結権および団体交渉についての原則の適用に関する条約(1949)
−同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条項(1951)
−社会保障(最低基準)に関する条約(1952)
−雇用および職業についての差別待遇に関する条約(1958)
−放射線防護に関する条約(1960)
−業務災害給付に関する条約(1964)
−障害、老齢および遺族給付に関する条約(1967)
−医療および疾病給付に関する条約(1969)
−ベンゼン条約(1971)
B 勧告
国際労働機関総会で採択され、労働者と使用者一般との間の関係の調和的かつ公正な運営に関係するもの
−労働協約に関する勧告(1951)
−任意調停および任意仲裁に関する勧告(1951)
−放射線防護に関する勧告(1960)
−協議(産業的および全国的規模)勧告(1960)
−業務災害給付に関する勧告(1964)
−障害、老齢および遺族給付に関する勧告(1967)
−企業内における経営者と労働者との間のコミニュケ−ションに関する勧告
(1967)
−企業内における苦情の解決のための苦情の審査に関する勧告(1967)
−医療および疾病給付に関する勧告(1969)
−企業における労働者代表に与えられる保護および便宜に関する勧告(1971)
−ベンゼン勧告(1971)
C その他の政府間の発議
−国連経済社会理事会第55回会議において、1973年8月10日採択された決議第1826号−“国の開発における近代科学技術の役割と諸国家間の経済的、技術的、科学的協力を強化する必要性”に関する決議
−同理事会で作成された“開発における科学・技術適用のための世界行動計画”
−“国連人間環境会議宣言”−1972年6月、ストックホルムで宣言
D 世界知的所有権機関(W.I.P.O)で作成されたもの
−発明に関する開発途上国のためのモデル法(1965)
E 国際学術連合会議(ICSU)で作成されたもの
−次の表題のテキスト:
T科学の基本的性格に関するステートメント
U科学者憲章
V科学によって与えられた力を不均衡に適用することから生ずる危険について
これらテキストは、ICSUの科学とその社会との関係に関する委員会(CSSR)によって作成され、ICSUの総会(第5回会議、1949)の要請によって、ICSUのすべての加盟機関に伝達された。
−次に関する決議
科学者の自由な交流
この決議はICSU第14回総会(ヘルシンキ、1972年9月16日〜21日)で採択された
F 世界科学者連盟(WFSW)の作成したもの
−科学者憲章
この憲章は、WFSW(1948年2月)において採択された。
−科学労働者の権利に関する宣言
この宣言は、WFSW(1969年4月)において採択された。
【出典:日本科学者会議パンフレット『科学研究者の地位に関する勧告』1986年】
(編注)「付属書」の部分は、原文と照合して加筆修正を行った。 |